カエルちゃん、日本を探検したい!

はじめに

「カエルちゃん」と名付けられた100体の小さなカエルのフィギュアが、長野県小諸市の山あいにあるコミュニティ・メイカースペースへ帰ろうとしています。ただし、カエルたちは自分の力ではそこへたどり着けません。カエルが動くのは、見つけた人がメイカースペースまで直接連れて行くと決めたとき、あるいはもう少し先まで運んでくれる誰かに託したときだけです。カエルたちは人から人へ、町から町へと手渡されながら、日本全国を旅します。ルートを決めるスタッフも、スケジュールも、中央で管理する人もいません。つまり、お願いをするのはモノ自身なのです。途中でつながりが途切れてしまったら、カエルは最初の場所に「リスポーン(再出現)」して、旅をやり直さなければなりません。カエルたちは25〜35か所のパートナー拠点に配置され、研究期間を通じて最大3,000人に届く見込みです。

すべてのカエルには小さなNFCチップが入っています。このチップは、手伝ってくれる人々をカエルの物語へと案内し、カエルがたどってきた場所を記録し、新しく世話をする人がその物語を引き継げるようにします。またこの小さなテクノロジーによって、私たちはカエルたちの旅の全体像を把握し、カエルが見知らぬ人同士の間を渡っていく中で生まれる社会的な交流を測定することができます。

「ソーシャル・オブジェクト」がもたらす行動上の効果を実証できれば、このプロジェクトは、ケアの担い手を募るという役割を、人間のファシリテーターから世界そのものへと広げていく実験になります。まずは自ら誘いかけるモノへ、そしていずれは同じように誘いかける場所へ。もしカエルが「面倒を見てほしい」と頼み、応えてくれる人を見つけられるなら、道端の祠や空き家、川沿いの土手、あるいは困難を抱える町にも同じことができるかもしれません。誰かが取りまとめなくても、それぞれが通りがかりの人々を手入れや維持に巻き込めるかもしれないのです。長期的な問いは、私たちが場所やモノに結びつける物語を通じて、ケアを地域の物質的・空間的な営みの中に根付かせ、環境そのものが対等で自発的なファシリテーターになりうるか、ということです。

この実験では、モノのまわりにより多くの社会性を生み出し、広げていく方法を検証します。人間関係が生まれる中心となり、人々を共通の取り組みへと引き込み、ケアを動員するような何かをつくることが目的です。言い換えれば、調整(コーディネーション)の役割をモノへと分散させるということです。

これを検証するためには、社会心理学とHCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)研究に基づいた、しっかりとした実験設計が必要です。このカエルのフィギュアとウェブアプリは一種の介入、つまり地域に導入されるソーシャル・オブジェクトであり、それによって行動、態度、社会的な関係性の変化を観察します。本書では、関連する先行研究を概観し、仮説を提示し、カエルちゃんが地域への関わりや場所への愛着(プレイス・アタッチメント)に与える影響を調べるための実験デザインを提案します。

実験は2027年春に開始予定です。

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